ラジオ第25回「最終回:AoE2コミュニティ論を語る回」

概要

放送次第

非難轟々になっても逃亡できるように最終回として話題に持ってきたのは、AoE2のマルチ対戦を支えるコミュニティに関する話となります。国内でも長いAoE2の歴史の中で大小数多くのコミュニティが存在しました。運営の仕方や方針も様々でしたが、共通してあったのはAoE2を楽しむことだったのではないかと思います。マルチ対戦だけが全てではないとこれまで何度も話に出してきましたが、AoE2の盛況ぶりをずっと支えてきたメインコンテンツの1つであることは間違いないと思います。そのマルチ対戦を提供し続けてくれたそれぞれのコミュニティにはまずは感謝するべきでしょう。

今回お伝えするのは、今AoE2で必要とされているものは何かを考え、それをコミュニティが提供するには何が必要なのかという話となります。背景にあるのは、昔と違ってそこまでプレイ人口が多くないということと、現在のセオリーが洗練され続けていることです。これらを念頭に置き、昔とは違う形でどういうコミュニティが望まれるのか考えてみることにします。

なお、放送中は過去にあったコミュニティをいくつか紹介していますが、ここで改めて個別紹介することについては割愛します。また、既存コミュニティ「AoCHD.jp」についても言及していましたが、ここでは一般論のような形で収めるのでやはり割愛します。

世界を目指すプレイヤーにとって

世界を目指すプレイヤーにとって

参考:ラジオ第23回「一丸となって世界を目指そう回」

世界を目指すプレイヤーにとって、スキルアップが見込める練習環境が単純に必要と言えます。特に、昨今の国際大会に目を向けた時、多種多様なマップを採用しているので練習相手も含めてそれらに精通している必要があります。1vs1ならVooblyで対戦環境を待てば、それほど時間がかからずに練習を重ねることができるでしょうが、チーム戦となるとなかなかそうもいかないと思います。しかも、身内として予めチームを組んでとなると、海外との時差の都合でなかなか人が集まりにくいかもしれません。要は非効率だという話です。

もし、(情報を公開している)国内コミュニティでそういったことに取り組む姿勢があれば、マップの攻略情報や普段の技術に関する討論など、活発な意見交換が見込めます。海外のプレイヤーを相手に交流することとの大きな違いは、日本語が使えるということでしょう。よほど英語に長けているプレイヤーなら苦にならないでしょうが、そうではないプレイヤーの方が大半かと思います。また、取組内容を公開したり新規参加者を募っているコミュニティであれば、継続的な活動も期待できます。

ポイントとなるところは2つ、「より効率の良い練習環境を構築できる」ことと「下のプレイヤーの目標になれる」ということです。前者は、単純に意見交換のしやすさというところが働きます。前提として、ある程度決めごとを作った上で、ゲーム毎に課題を見つけるなどの感想戦を行う必要がありますが、継続的に取り組めば着実に上達ができると思います。また、一人で取り組むわけではなくなるので、練習に付き纏う辛さや苦しさをある程度他人と共有することで和らげることができるでしょう。後者は、Webサイトなどで活動状況などの情報を公開することが条件となります。下のプレイヤーにとっての目標になれるということは、AoE2プレイヤー全体の活性化に繋げることが出来ます。もし、下のプレイヤーが追いついてきて共に世界を目指すプレイヤーの一員になることがあったならば、その中のコミュニティにとっても起爆剤の1つとなれますし、いい事ずくめです。

aoc_expert

前回のラジオ放送でも、世界を目指すということは生半可ではないとお伝えしました。様々な苦労が伴う中で、一人で世界を目指し続けるのはなかなか酷な話というものです。その辺を、コミュニティが支えて後押しするような環境を構築することができれば、そのプレイヤーだけでなく、全体の活性化も狙えると考えています。一丸となって挑戦しやすくなる方針を掲げて、情報共有のしやすいコンテンツを取り入れることがコミュニティに求められているものと言えるでしょう。過去のコミュニティの事例として「#aoc_expert」(サイトは既に消失)が参考になります。

AoE2未経験者にとって

AoE2未経験者にとって

参考:ラジオ第24回「Age of Empires IIを未経験者にガチで勧める回」

以降、マルチ対戦の話で進めます。それ以外で未経験者をサポートという話は前回の放送回の方が参考になるかと思います。

未経験者~初心者がAoE2に求めるものは、単純にゲームとしての「楽しさ」です。しかし、マルチ対戦ができると聞いてAoE2をプレイしてはみたものの、勝手が分からないまま負け続け、改善点を見出だせないようでは普通は楽しくないでしょう。ですので、「勝手が分かるようになる」「改善点が見出だせるようになる」ことを次に欲するようになります。もっとも、これらを欲する前に別のゲームに行ってしまうパターンもありますが…。

このような人たちに対して、コミュニティは何を提供すれば良いでしょうか。そもそも、コミュニティとして「新旧交えて楽しくゲームをし続ける」ことを信条にしていなければいけません。もちろん、体験枠のようなものを用意してもいいと思いますが、願う所は人口の定着によるAoE2の長い繁栄のはずです。であれば、未経験者~初心者が定着するように手ほどきをしなければならないでしょう。

未経験者は大変

これまで数多くのコミュニティがそういった話に取り組んできました。AoE2が発売されてから日が浅いうちは多くの初心者勢が集う場所があり、セオリーが分からないながらも、もみくちゃになりながらゲームを楽しむことができた時代があったと記憶しています。この時は、ある程度指南書らしきものを置いておくくらいで、基本的には初心者同士での活発な意見交換だけでお互い楽しみながら成長できる環境がありました。要は、手取り足取り教えなくても、AoE2というゲームに馴染みさえすれば定着できる要素がありました。

しかし、時代は変わりました。既存プレイヤーの下位レートのプレイヤーでも、洗練されたセオリーをある程度把握しており、未経験者と既存プレイヤーの差は以前より相当開いています。となると、例えば4vs4のチーム戦をする場合、未経験者でも8人のうちの一人と数えられるくらいのプレイヤーになるためには、かなりの技術習得が必要となってしまいます。さもなくば、未経験者込のチーム戦の場合、基本的に3vs4のような戦況となってしまい、既存プレイヤーは未経験者をスルーして戦ったほうが効率的と思ってしまうでしょう。このような環境が続いてしまうと、正直お互いにとってメリットを生み出しづらいところがあります。

ですので、コミュニティとして指南しておかなければいけない要素として、「最低限チーム戦で戦力と数えられるようになるまでのスキル習得」と「その習得をするまでのマンツーマン的な支援」が必要だと考えます。戦力として数えられるようにするには、端的には「放っておくのはさすがにマズい」と思われることです。逆に、なぜスルーされてしまうかというところを考えた時、そのプレイヤーに攻める気がないと悟られてしまうからだと思います。

個人的には、この辺りの線引きとして「AI戦の一定難易度以上で(なるべく時間制限を設けて)勝利を収めることができるか」というところを挙げておきます。AI戦に勝利できるということは、「勝利するために攻めなければいけないということ」と、「攻める準備をするための一定の内政力を構築すること」に理解があると捉えます(当然、時間経過の意識も必要ですが)。相手がこれを脅威と思えば、スルーできなくなる存在、つまり戦力として扱われることになると考えます。この話は漠然としすぎているので、実際には基準となる数値を定めて指標を合わせて作っておいたほうが良いでしょう。具体的には進化時間、獲得点数といったところです。

こういった事項を未経験者が誰にも教えられずに独自で調べてもらうというのはさすがに酷な話です。ですので、段階的に指導できるパートナーが必要となります。パートナーというものが仰々しいのであれば、単純にコミュニティ全体で交流をしながらサポートしていけば済む話でもあります。いずれにせよ、なるべくつまずく箇所がないよう成長の過程を見守ることのできる環境が必要と考えます。この話が昔と違うというところは、覚えなければいけない内容が昔に比べて多すぎるというところから来ています。覚える内容が段階的に習得すれば良いということであれば、実践を積み重ねながら覚えていってもらうのが本当は効率的でしょうし、なによりゲームを楽しむ機会が増えます。しかし、既存プレイヤーとの差がある以上、マルチ対戦を楽しむための最低限の要素を習得しておかないと、結果的にお互いの楽しみを奪う事態になりかねません。教える側も手取り足取りと時間を使いづらいのであれば、掲示板など情報を共有できるコンテンツを用意して皆でサポートしていけば良いでしょう。

長々と書きましたが、ポイントとなるのは初期段階の支援による未経験者の「定着」と、その人が自分で考えて楽しみを見つけることができるようになる「自立」です。AoE2に限らず、おそらくどんな話でもコレを一人でどうにかしろって話は大変なハズです。周りからの支えがあってナンボだと思います。ですので、受け入れるコミュニティとして、未経験者が感じる苦労に寄り添って考え、ひとつずつ解消していけるようサポートすることが、結果的にAoE2の繁栄に繋がるでしょう。

既存プレイヤーにとって

放送内で特に取り上げてなかった話ですが、補足ということで。

ゲームに対する志向は人それぞれでしょうから、例えば世界を目指すなんてことはせず、ただマルチ対戦が成立する環境があれば何でも良いと思う人もいるでしょう。コミュニティに「AoE2を通じて交流を深める」という要素があるなら(当然あると思いますが)、本来はそれだけでコミュニティの存在意義が成立し、これまでのような話をグダグダと並べる必要はないはずです。

しかし、世の中には多種多様のゲームがあり、人は移り変わるものです。AoE2もその例に漏れず、人の出入りが起こるゲームのはずです。人の出入りが起きれば、必然的に様々な価値観、経験を持ったプレイヤーが一堂に介します。であれば、そういった環境に適応できるよう、コミュニティの一員として守るべきルールを制定する必要があると考えます。「大人としての常識」という話で暗にルールを用いると、何かしらトラブルが発生した時に個人の価値観が噛み合わず、議論がいつまでも平行線のままとなる恐れがあります。結果、どちらかが引くしかなくなり、それはイコール衰退を意味します。トラブルが起きなければ良いと言われればそれまでですが、不可抗力的に起きる内容はある程度予見しておく必要があるでしょう。

「普段どおりゲームを楽しむ」ということは思いの外難しいと僕は思います。なぜなら、ゲームに参加するにあたり、毎回普段どおりの気分となることがないからです。例えば、普段の仕事をこなす中でゲームをするとなったとき、仕事のストレスを抱えたままとそうでない状態では、ゲーム中に感じることも変わってくるはずです。そういう話が8人(4vs4)集まれば、予期せぬトラブルなどいくらでも起こりうると思います。そんな時に「普段どおりのゲームを楽しむ」と気づかせてくれるものは、コミュニティのルールではないでしょうか。目に見えるルールにしておくことで、誰もがそれに納得した上でゲームをするわけですから、一時的に感情的になったとしても冷静にルールを見つめ直して省みる機会を得ることができると思います。ルールを制定することで縛られがちになると思われるかもしれませんが、中には主張の弱い人もいてガマンを強いられている人もいるかもしれません。なるべく全体として調和が取れるよう意識する、そのために(方針に基づいた)ルール制定が必要となってくるでしょう。

総括

総括

はっきり言って、コミュニティを作り、ルールを決め、日々管理するなどといった流れはとても大変なものです。何事もなければ良いと思うのはあくまで理想であり、沢山の人が交われば何事もないわけがないです。それでも、何も行動しないようであれば、盛者必衰の言葉が表すとおりいずれ廃れてしまうものです。廃れてから悔やんでは遅いので、そうならないようコミュニティを日々支えていく意識が大事だと思います。ゲームに飽きが来るのは仕方のないことです、人間ですから。しかし、逆に新しくゲームを始めようと思って手にとったものがAoE2という話もきっとあります。コミュニティのおかげでゲームを楽しみ、上達することができたと思っている人は、そんな新しく入ってくる人をぜひ大切にしてあげてほしいです。その継続が、コミュニティを長い間繁栄させてくれると思っています。

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